■いつかきっと■

 オレさま、☆海に居座り続けてるボンタンアメ。
 他の兄弟たちは、他の場所もよく知っているガ、オレさまはここに来てからというもの一歩も外に出ていナイ。
 だから、人はオレさまを略して☆飴と呼ぶ。
 そんなオレさまは☆海がなくなると聞いたケド、どこにも行く気がしナイ。
 オレさまのいる場所はここダ。
 沈むからといって、他の世界に出ていってなんかやるもんカ。

 沈没の少し前、ジャガ屋敷が強奪者で賑わってた。
 オレさまも非力だが意気揚揚と乗りこんで行ってスイッチ踏み。
 役立たず?
 何を言う。オレさまやそこにいた他のヤツらが踏んでなければ、入れても帰って来れないんだゾ!
 だけど、オレさまは“謙虚”という言葉が好きダカラ、略奪品を分配する時、他のみんなが取り終えるのを待つことにした。
 オレさま。必要以上に自分の権利を主張するのは好きじゃないからナ!

 そんな中、マスターがたまたま持っていたブーツが戦利品の山に放りこまれた。
 ぉお。そいつをちびねこに持ってったら、喜びそうだナ!
 じゃがばたこーんはもうナイが、ブーツが1個目を全員取り終えるまで残っててくれたら…
「これでいいや」
 ばたこーんの権利を譲ったやつが、ブーツを拾いあげてそのまま置いて、別なのを選んだ。
「みんな行き渡ったようだから、次、2個目!」
 おぉ、取り終えたカ。じゃぁ、ブーツはオレさまが頂いて行くゼ!
「あ。みんな取り終わったなら1個目」
 言ったら、みんなにまだ取ってなかったのかと言わんばかりの声で呼ばれた。
「あめえぇええ」
「ボンタネーム」
「ぼんた君」
 “あめ”はいいけど、他のは何なんだヨ!
 オレさまはオレンジ色のカッコイイ、ボンタンアメさまだゾ!
 ぶーたれつつブーツをとったオレさまに、色んなヤツらが鑑定結果を教えてくれって言う。でも、オレさまじゃ鑑定できない。
 後でちびねこに言っておかなきゃなーって思ってると、さっき拾ったやつがこそっと鑑定していたらしくて、結果をざざーっと言った。
 そうか、こいつがブーツをそのまま置いたのは、性能が気に入らなかったからだナ?
 確かに性能重視のヤツは気に入らないかもしれねーが、☆海が好きで好きでメロンメロンってヤツには関係ねェ。
 これがフルエレメンタルの1つって時点で、すごい宝物だからナ。
 そうやって騒いでいると、マスターがそろそろ沈めると宣言した。
 もう、そんな時間カ…って、オレさま、これだけは渡しに行かないとダメだロ!

 ゴゴゴゴゴゴゴゴ…
 地響きが大地を揺らし始めた。
 ちびねこが朝から水浸し水浸しと騒いでいたから、最後はきっと津波がドーンとやってくるんだろう。
 津波が…あぁあ…オレさまをカッコヨク包むオブラートが溶けちまう!
 …マァ、そんなことは溶けてから考えるとして。
 ☆海を出たオレさまは、ちびねこのいる方向へとぶっちぎり爆走した。
「オイ。ちびねこ!」
 ぼけらーっとゲートの方を見ていたちびっこに、力いっぱいブーツを投げた。
 ぽすっと腕の中にちゃんと収まったのを見届けて、オレさまは言った。
「それ、運よく手に入ったんだから大事にしろヨ。残り物には福があるってよく言ったよナ」
 そう。最後まで待ってて手に入った、とんでもない宝物。
 リターンで飛んで、☆海へのゲートをくぐって戻る直前、ちびねこの飼い主にこっそり伝言した。
 ちびねこはあのままでもきっと大事にするだろうけど、飼い主にはあれが何なのかこっそり教えておいてやろう。
 いつか、あれが何なのか気になった時に、オレさまがまだ帰ってきてなかったら、謎は謎のままだからナ!


 ☆海に戻った時は20人ちょい。
 まだまだジャガ庭に大勢集まっているが、さて…オレさまはどこで眠りにつこう。
 ちびねこがきれいに整えた家にしようか。そよ風さわやか展望台か。
 それとも―

 オレさまがその時を迎えるのに選んだ場所は、もうすでに先客の姿。
 “何ダ。結局、みんなここカ”
 中にはやっぱり家だと言うヤツもいたが、それでも気付けば…
 水没して以前の面影が薄れた樹木公園に集まったオレさまたちは、さっきの戦利品ごと沈むという言葉に笑ったりした。
 そんな事やってると、いつかもったいねーお化けってヤツが出てくるゼ?

 今残っているのは、このままここに眠ろうってヤツらで、色んな言葉が世界中に響いている。
 ここが好きだってヤツらがこんなにいる。
 一緒に沈むってヤツがこんなにいる。
 今ここにいることが出来て、ここで活躍する飴だったオレさまは幸せダ。

「さようならー」
 誰が言ったのか分からない、そんな言葉を聞いて、
「いつか戻ってきたい。だからさよならだけはいいたくない…」
 口走った言葉に被さるように水が流れ込んで来た。

 何だかんだで、よく知るヤツらはここに集まってきた。
 次に目覚めた時には、こいつらの顔がきっと一番最初に飛び込んでくるはずダ。
 …これって、すっげぇ幸せ…なんじゃ…ねー…のか…な……

 

これを書いている時にずっと聞きっぱだったBGMのトロイメライ(Vo/ルルティア)には
「さよならって言えなかった事 いつか許してね 同じ夢を生きられないけれど ずっと見守ってるから」
という歌詞があるんですが、彼は同じ夢を生きる事は出来ないかわり、一緒に眠る道を選びました。
3代目ボンタンアメ。☆飴くんはその通り名のまま☆海と共に眠り、目覚める時まで夢を見続けるはずです。
この歌詞、今は☆海の外にいるビオラたちがぴたっと当てはまっているような気が…(ノw-。

今なら、日曜9時から放送のTV東京系の某アニメでオープニング曲として使われていますので、 もしよろしければ聞いてみてください。エンディングも合わせて素敵な曲ですよ。(2003年10月時点)

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