1月

Diary Top - 1

1月23日:???

「メロン、グレープフルーツ、あんまん、ホットケーキのどれが一番好きっスか」
「その選択肢には、食べ物以外の共通点らしきものが見えないのですが、一体何なのですか」
「にーちゃんの奥さんはたぶんグレープフルーツだと思うんだ」
「いや、ですから何の……」
「何でもいいから選べ。すぐに!」
「……グレープフルーツ?」
「よしきた。来月グレープフルーツが愛の押し貸しに行くゆえ、首を洗って待っているがよいぞ!」

来月……チョコ?(’’
しかし、グレープフルーツに何の意味があるのか、さっぱりです。
チョコレートの味ではなさそうですし……

1月16日:去るものは赦さない

こちらの世界では性別不定の鳥くんですが、
異世界では男性として活動しているらしく、たまに彼女(?)の話を語りにやってきます。
けれども、今日の話は微笑ましい事などこれっぽっちもない、ただの愚痴でした。

「コレ見てカッコイイ!なんて言って、ぎっしりMOBの山越え、クエの谷越え、
デブ人魚の海まで越えて、会いに行くのってどうっすか?」
机いっぱいに広げられた写真。数はものすごいですが、写っている人物は2人。
鳥くんいわく、片方は魚人で、もう一方はカラスの化身なのだそうですが……
見る限りでは、どちらも容姿端麗。
かつ、筋肉質でありながら兄貴のように隆々ではなくといった雰囲気の男性です。
「イインジャナイデスカー?」
「いいのか!」
「恋人だって名乗れる関係でもないなら、誰に憧れようが勝手でしょう」
「恋人っスよ!」
悲鳴を上げる鳥くんに、『彼女』本人に一言聞いてみたいと首を傾げてみたり。
「それなのに、自称保護者とカテキョーは競うようにコイツらの写真とってきてアイツにやったり、
自分がモテないからって人の恋路邪魔して、
あのストーカー魔導師とセクハラ教師はカラスやマーマンよりムカツク。
馬に蹴られた先で人魚のキスにお待ちかねされろってんだ」
写真を力いっぱい叩く鳥くんでしたが、1つ空いた椅子の上、置かれたぬいぐるみに目を止めると黙り込みました。
「どうし……」
こちらが問いかける間もなく、ぬいぐるみを鷲掴み、しっぽをぎゅ〜と引っ張りだす鳥くん。
彼の怒りに触れる何かが、このふかふかで愛らしいシマシマしっぽにあったようです。
レッサーパンダのそれが可哀相なくらいに伸びています。
しかし、この様子は……

「どしたんスか」
手元へと注がれる視線に気付いた鳥くんは、何とも気味悪そうに尋ねてきます。
「いえね。
今のあなたが、あの方に会おうとして邪魔されている時の私と、非常に似ていると思いまして」
ぽろっと、手から零れ落ちるぬいぐるみ。
引き伸ばされたしっぽが、てろりと床に横たわっています。
……後でスチームをかけて、直しておかないといけませんね。
「そ、そそそそれって」
本人は、これまで全く意識していなかったのでしょう。
今まさに、突きつけられようとしている事実を理解して、声が震えています。
にぃっと口元が歪むのを自覚しつつ、鳥くんに手を差し伸べ――

「ヘタレの行列、青い人パレードへようこそ!」
「ギャー!俺ヘタレの青い人違う!幸せの青い鳥っス!」

認めてしまえば楽なものですよ。

1月12日:(..。^

夢見とフェリルのおうちに1個ずつある宝箱。
お引越しのたびに増えていった物は、思い出がいっぱい詰まってまし。

おねーさんにもらったTEWのロゴ入りリボン。
おにーさんにもらった絹みたいにすべすべの青いリボン。
アップリケつきのパジャマ。
四つ葉のクローバー。

中を一個一個見ていくと、いなくなってしまった人の事、沈んでしまった世界の事を思い出しまし。
3ヶ月ちょっとで、思い出になってしまう世界がまた2つ。

1月9日:夢見とフェリル

4月30日に世界沈没予定――夢見マスターからのお知らせ。

FoF鍋の中という目覚めの悪さも吹き飛び、うちは叫んだ。
「うそー!?」
あちこち動き回る店番ちゃんの代わりに、この家を管理していただけにショックも大きいわ。
ともかく、うちが持ち出せるもんは出しといてと。
大急ぎでサークルの鍵開けて、お隣の国フェリルへ移動させようとしたら――

『4月30日の22時で沈没させます』

なんと、こちらも同時に沈没予定。
ざぁっと血の気が失せるのを感じたわ。
世界2つ分の荷物移動の上に、フェリルの隣はエッジとR3と夢見で、
お隣の世界で一時保管なんて事は出来やしないし、
他世界物の補償が確実でないNEOに、全てを置いておくのも不安。
期限はかなりあるけれど、のんびりしていたらきっと地獄を見る。

1月9日:戦利品

「新年おめー」
手を軽くあげて、部屋へと入ってくるのは青い鳥。
挨拶もそこそこに交し合う視線の先には、赤い紙袋。
「準備オケっすね」
「もちろん」
小脇に抱えられた紙袋が3つ。
部屋の中央を占拠する机に置かれた紙袋も3つ。

そして――

「おはよー!」
元気よく飛び込んできた彼女の腕にも3つの紙袋。
「これで揃いましたね」
袋に大きく書かれている文字は「福袋」。

それが「欝袋」になるか、文字通りの福袋となったか。
知るのは悲鳴と歓声の主のみ?


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