3月

Diary Top - 1

3月14日:わんこらぶオーラ

今日は何やら静かです。
ねこのお嬢さんは着ぐるみを着て、部屋の隅っこに転がっていますし、
いつもと変わらないはずなのですが……ふむ。
「ふぁぁあ」
足を折りたたみ、寝やすい位置に頭を落ち着けると一あくび。
うっすらと感じる違和感ですが、もこふかクッションの上に寝転がると、たちまちどうでもいい事のように思えてきます。
ねこのお嬢さんもグッスリですし、私も……
と、そこに間が悪く睡眠を妨害する声が頭に響きました。

『すまないが、休むのは少し待ってもらえないか』
耳黒のなら聞かなかったフリで寝るのですが、これはねこマスターの声。
仕方なく答えると、ねこマスターは言うのです。
『Dixでサーラが……』
「お断りします」
耳黒関連なら全てお断りです。全力で拒否させていただきます。うっかり近寄って悪夢を見るのはごめんです。
『まぁ、そう言うな。彼1人が気落ちするだけでは済まないような事だ』
「耳黒以外もガッカリするのですか」
それは少し気になります。
『要点のみ言おう。今日はホワイトデーだが、サーラがDixごと沈んでいる。
あの子はこちらへ来るだろうが、このままだと返礼が出来ない』
“あの子”というのは耳黒の奥さんのことでしょう。
確かに、何も悪くない奥さんがガッカリしそうです。ですが……
「耳黒の代わりにプレゼントを用意しろと?」
『物はそちらに置いてあるそうだ』
そこまで整えておきながら、本人は当日いないというわけですか。
『欠けているのは当人のみという辺り、詰めが甘いというか』
「耳黒ですから」
耳黒なら、どんなトホホ現象が起きても驚きません。
きっぱり言う私に、ねこマスターは歯切れ悪く言いました。
『……とりあえず、頼まれてくれるか?』
「いいでしょう。耳黒はともかく、奥さんにまで嫌がらせをするつもりはありません」

しかし、ずいぶん静かだと思ったのは、耳黒の気配がなかったからなのですね。

3月14日:最後にいた世界はDixでした

細く編まれた銀に白い宝石が輝く冠。
頭にのせるだけで首が鍛えられそうな金の冠。

1月程前に用意したホワイトデーのお返しは、すでにClosedへと運び終え、残るは渡すだけ。
準備はぬかりなく万端だったはずです。

それなのに――

よりにもよって、今日この瞬間にDixが落ちているなんて。


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