5月

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5月17日:はでかりとる

「ご依頼の品をお届けに参りましたわ〜」
Closedの家にどことなく間延びした声が響いたのは、夕方の事。
玄関に出て行くと、メイドさんが白く平べったい箱を抱えて立っていました。
「あぁ、ありがとうございます」
赤いリボンでラッピングされた箱を受け取り、中……は確かめられませんね。
「問題なく、ご依頼の通りですの。
柔らかいアンゴラを鋭い歯で丁寧に狩り取って、隙間なく植え込み扇に仕立て上げておりますわ」
売り文句を滑らかに述べて微笑んだメイドさんですが、何か不穏当な発言があったような。
聞き間違いでしょうか?
「何か疑問がおありですか?」
「えーと、もう1回言っていただけますか?」
「はい。
柔らかいアンゴラ毛を鋭い刃で丁寧に刈り取って、隙間なく植え込み扇に仕立て上げております」
あぁ、やはり聞き間違いでしたね。
改めて聞くと、変な所はひとつもありません。
「――先ほどは少し早すぎたでしょうか?」
首を傾げるメイドさんに「いいえ」と答えて、箱を大事にサークルへとしまいこみました。

準備は上々。
後は明日を待つばかり。

5月10日:引退ではなく隠居らしい雰囲気

月初めの世界回りにも何となく出る気がせず、Fortuneで怠惰に過ごすこと数日。
いい加減行かなければまずいな。
そう思いはじめたところで、ようやく腰が上がった。

頭に思い浮かぶこれまでの道順は、先月末で分断されてしまっている。
エッジ、フェリル、R3……
糸を結ぶように切れた両端が繋がっていればいいのだが、
切れたままであれば、一度ここまで戻ってから首都へ向かうしかないだろう。
やれ面倒なとぼやくもどうしようもない。
とりあえずはエッジへと足を向け、フェリル行きゲート跡地の確認に行く。
ないかもしれんなと半ば覚悟していたゲートは、予想に反して煌々と輝いていた。

ほっと胸をなでおろしたのも、ほんのわずかな間の――
首都にあった夢見での知人宅が、空き家になっていると気付くまでの事だった。

5月8日:耳

アクセの修理依頼にやってきた鳥くん。
今日は少々悩んでいることがあるようです。
簡単に言うと、とある間違いを指摘するか否かという事なのですが、
「わざとなのか素ボケなのか」と首を傾げる鳥くん。
その方の人となりを聞く限りでは、両方ありえそうな間違いではあるものの、
命にかかわるような間違いでもないですし、指摘と放置どちらを選んでも大差ないような。

Cloud-Radias > 汝の為したい様に為すがよい(’’
Jay_Blue > にーちゃん
Jay_Blue > 耳カバー取れてるッスよ
Cloud-Radias > Σ(’’∩ パッ
Jay_Blue > くまの子見ていたかくれんぼー
Jay_Blue > お耳を出したこいっとーしょー
Cloud-Radias > (’’ブ ピコ
Jay_Blue > くーろいお耳が顔出したー
Jay_Blue > か〜おだーしーた〜♪
Cloud-Radias > 黒くないですよ
Jay_Blue > 黒いヨ!?

こんなに真っ白な耳を黒いだなんて、鳥くんの目は節穴でしょうかねぇ。

ついでに、何のことやら分かりませんが、去り際に残した鳥くんの一言。
「にーちゃんはなでる気しねーなー」
私だって撫でられたくないですよ。


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