7月

Diary Top - 1

7月30日:わふー

今の季節には最適、ぽよぽよウォーターベッドの上で過ごす日々。
あまりの心地よさに、来訪者にも気づかないぐらいグッスリと寝込んでしまったらしく。
枕元に設置したメッセージボードには新しい書き込みが増えていました。

『ガオー』

「…………」
その1つ前には「ワン」と書かれたメッセージもあるわけですが……
えー。
あなた方は、私に何を望んでいるのでしょうか。
あまりの衝撃でだだ漏れになった念を受信したどこかのへたれが、萌え死にそうになるのを期待しているのでしょうか。
だとすれば、限りなく成功していると思います。

7月26日:集めた素材が全滅

私がリュアに来て数日。
花に囲まれ、公園で微睡み……
姉様と一緒に過ごす時間はとても和やかで、心安らぐものだったわ。
けれど、姉様は気づいてしまった。
部屋の片隅で眠り続けていた、氷の魔獣の名を冠せしその刃に――

もろくも崩れ去った残骸を手に、姉様が肩を落とした。
「やはりダメですわ」
これで何度目の挑戦?
ねこっこ親子に次いで器用な姉様がここまで手こずるなんて……
「以前に生成したのはどなただったかしら?」
首を傾げての問いかけに、私は眉間のしわにマッチ棒を挟みこめそうな人物を思い浮かべた。
「ここまで来ることってそうはないと思う」
根っこが生えただのなんだの言われる人だもの、来てもらおうって考えるのはとんでもない。
そう言う私に、姉様も同じ人物へと思い至ったのだと思うわ。
「私が頑張るしかないわね」
と決意のまなざしも鋭く、素早く荷支度を済ませるとリュアを出て行ってしまった。
行き先を聞きそびれたけれど、想像くらいは付くわ。
自分で頑張るにしても目標が必要だもの。
「は〜……」
追いつくにしても何日かかるのかしら、途中で諦めてくれればいいけれど。

7月19日:まるで動かさずは無駄

暗く心地いい部屋の中。
目をつぶる私の耳に、果てない海の彼方にいる姉様の声が聞こえた気がした。
『……足りませんわ』
次に聞こえたのははっきりと、ため息交じりで嘆く声。
といってもこの声は、いくつもの箱庭を繋げたようなこの世界にいる時に限って可能な念話に過ぎず、
姉様自体がここにいるわけではない。
「何が足りませんの?」
姉様の言葉に切実なものを感じて問いかける。
私と同じく控えめな性格をしている姉様は、欲しいものがあってもそれを滅多に口にすることはない。
それどころか、誰かが欲しいと言うものを作る方が好きらしくて、
ねこっこのためにドレスを縫い、お菓子を集めと――まぁ、さまざまなことをしているわ。

『お金ですわ』
「はい?」
聞き間違いかしら?
今、姉様にはあまりにも似つかわしくない単語が混ざっていた気がするの。
念話には関係ないと知りつつ――耳に後ろ足を突っ込んで掃除などしてみたけれど、聞こえたのはやっぱり同じ。
『お金が足りないと言っていますの』
姉様はサークルの中身をきっちり管理しているから……きっとあれね。
そう、そうよ。きっとそうに決まってるわ。
「泥棒でも入りましたの?」
『そうではなくて、赤字……つまり金欠状態ですわ』
金欠、すなわち貧乏!
私や姉様に最もふさわしくない言葉が頭の中で連鎖反応を起こす。
「ど、どどどういう」
『落ち着いて』
「私は落ち着いてますわ!」
ええ、とても落ち着いてますわよ。
落ち着いているから、早く詳細が知りたいと思うんじゃありませんの?
『私の稼ぎでは出費になかなか追いつきませんの。かといって貯金に手をつけるのも躊躇われて……』
あぁ、驚いた。
「てっきり、貯金も全部使い果たして困っているのかと思いましたわ」
『いざと言う時のお金はきちんと残しておかないと』
いざと言う時……
そういって、結局使われずに増える一方だったお金があるのを私は知っている。
部屋の奥にあるサークルを凝視して、ぽんと手を1つ叩いた。

持ち主から『いいでしよ』と了解を得て、私はざくざくとサークルの中を掘り返す。
ワインビンに干からびた草に価値があるとは思えない大量の石っころに……
宝箱と銘打ちながら、ゴミ籠の中みたいになっているのを見ると、げんなりしてくる。
一体どこにしまっているのかしら――ああ、あった。
ゴミに埋もれていたそれらを引っ張り出して、しげしげと見つめる。
「どうやら、傷はついてないようね」
わずかな傷で価値が激減してしまうのがMsp。正体不明の石と一緒くたにされていた割りに状態がいい。
ほっと息をついて、私はそれを皮袋に詰め込んだ。
さあ、後は姉様のところへ持って行くだけ。

部屋の奥、静かにたたずむサークルを見てにこりと笑う。
ここには数年分の“いざと言う時のため”が保管してあるのだから、安心ね。

7月3日:なでる人

DM > Shehelly がログインした. 
DM > Shehelly は Seeds を装備した.
Jay_Blue > なでなで
Shehelly > Σ

待ち構えられてたっ!


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