「うん。よく似合う」 衣装を準備した耳黒の奥方は、着替え終えた2人を眺めて満足そうに頷いていました。 しかし、解せないことが1つあるのです。 「なぜ、赤ずきんなのですか?」 奥方が連れている猫のお嬢さんは、赤ずきんの衣装でおめかし。我が家のお嬢さんが着ている狼の着ぐるみと比べてみれば、単に可愛いだけで、今日のイベントには少し不釣合いに思えます。 「んー。確かに、見た目だけじゃ怖くないねぇ」 「狼と赤ずきんの組み合わせという意味では面白いですが」 「まぁ、あれよ。赤ずきんってのは……」 奥方が私の耳に理由を囁きかけました。 「あぁ、なるほど」 「お菓子もらいに行くでしっ」 「行くですー」 食べる方と食べられる方に扮した小悪魔2人組、バケツとカゴを持っていざ出陣。 私も一緒について行き、本職悪魔として彼女たちの補助に。 『Trick or Treat! 頭巾の染料になりたくなければ菓子をよこしなさい!』 ――耳黒には通じないので、Trick and Treatで。 |